会社員という仕事について ― なぜ「理不尽」が構造的に生まれるのか

会社員として働いていると、「おかしいと思うこと」「納得できない決定」「自分の気持ちを後回しにしなければならない場面」に何度も出会います。

そのたびに、こう言われることがあります。

  • おかしいと思うなら、変えればいい
  • 合わないなら、辞めればいい
  • 文句を言うのは甘え

一見すると、どれも正論ですが、本当にそうでしょうか。

「会社員という仕事」を感情ではなく構造として整理してみましょう。

目次

会社員とは「自分の意思を最優先にする仕事」ではない

会社員とは、会社の方針・社風・決定に従うことで賃金を得る仕事です。

どれだけ誠実でも、どれだけ正しい意見でも、どれだけ現場を理解していても、最終的な判断を下すのは、ほとんどの場合「会社側(経営・管理)」。

これは、内定後の条件確認や契約前の交渉段階と、入社後に指揮命令下で働く立場とでは、前提が大きく異なります。

構造上、

  • 方針を決める権限
  • 予算を動かす権限
  • 人事・評価を決める権限

これらは、現場の個人には与えられていません。それでも多くの人は、「裁量を持って働きたい」と願います。だから求人票には「裁量」という言葉が並びます。

つまり、通常、会社員とは、自分の信念や感情を最優先できる立場ではないという前提の上に成り立つ働き方ということです。

「変えればいい」が成立しにくい理由

よく言われる「おかしいと思うなら変えればいい」という言葉は、理屈としては正しい。

しかし、現実にはこうです。

  • 変える権限を持っていない
  • 提案しても採用されるとは限らない
  • 変えようとすると摩擦が生じる
  • 摩擦の責任は現場に返ってくる

会社員の多くは、「変えたい」と思っても変えられない位置にいる。

それでも働き続けているのは、能力がないからでも、勇気がないからでもなく、生活、家族、将来、健康、タイミング。

さまざまな条件の中で、「今は耐える」「今は辞めない」という判断をしているだけです。

なぜ理不尽が生まれるのか

会社は、基本的に組織の都合で動きます。

  • 数字
  • 効率
  • 評価
  • 体裁
  • 継続性

これらは、会社にとっての合理性。

一方で…

  • 個人の幸福
  • 納得感
  • 心身の余裕
  • やりがい

これらは、必ずしも会社の優先事項ではない。

このズレが、

  • 自己犠牲
  • 我慢
  • 自責
  • 「自分が悪いのかもしれない」という思考

を生み出す。

理不尽は、誰かが悪いから生まれるのではなく、合理性の基準が違う場所で働いている ことから生まれます。

「誰かが悪い」という話ではない

誤解してほしくないのは、ここからです。

  • 会社が悪い
  • 会社員が悪い

という善悪の話ではない、ということ。ただ、そういう仕事構造であるという整理です。会社員という働き方は、一定の安定と引き換えに、意思決定の主導権を手放す仕事でもある。

それを知らずに期待しすぎると、必ずどこかで苦しくなります。

必要なのは「距離感」と「線引き」

会社員という働き方を選ぶこと自体は、否定されるものではありません。辞めない選択も、耐える選択も、生活を守るための立派な判断です。

ただし、必要なのは

  • 会社と自分の人生を同一化しない
  • 評価=自分の価値だと思い込まない
  • 期待しすぎない
  • 割り切る
  • 線を引く

という視点。仕事は人生の一部であって、すべてではありません。

RIFUZINESとして伝えたいこと

会社員は、会社の命令に従って稼ぐ仕事です。外から見ると消極的に見える選択にも、必ず理由があります。結果だけで判断せず、「なぜその選択をしているのか」を見る視点が必要です。

筆者が以前いた事業会社では、マーケターの入れ替わりが非常に激しい時期がありました。中途採用で入ってきたマーケターは、入社して間もなく、「こういう発信ができていない」「本来はこうするべきだ」と、外から見た“正論”の戦略を上から目線で提案してきます。

しかし、その多くは、すでに社内で検討され、共有され、会社の都合によって却下されてきた施策 でした。予算の問題、組織の事情、経営判断、過去の失敗。会社の中にいないと見えない理由が、そこには確かに存在していました。

外部から来た人間にとっては、「なぜやらないのか理解できない」ことでも、内部にいる人間にとっては、「やらない理由がはっきりしている」ケースは少なくありません。

それでも、外から見れば「何も分かっていない」「動かない」「やる気がない」と映ってしまう。筆者は、事情を知らないまま提案が跳ね返される光景を何度も見てきました。

会社員として働くとは、そうした 見えない事情を抱えたまま、命令と判断に従う立場 に立つということです。この前提を知った上でこそ、理不尽に耐えている人の声は「甘え」ではなく構造の中で生きる現実として見えてきます。

自営業の人は、ときどき、会社員の働き方を「出社していればお金が入る」と表現する声があります。それは、正論のように感じますが、会社員側の意見としては、そんな一言で済まされるほど楽な仕事ではない。自営業者にはない、不本意に長時間耐えることが当たり前の毎日を過ごしています。

だからこそ、「脱サラ」や「独立」という言葉が生まれます。会社員が楽だからではなく、意思決定の主導権を取り戻したい人が一定数いる。そう整理すると、現実が少し見えやすくなるはずです。

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