内定をもらった瞬間、安心したくなる気持ちは誰にでもあると思います。でも、本当の「見極め」はここから始まります。
求人票や面接の言葉だけでは、企業の実態は分かりません。働き方、待遇、評価制度、残業……。これらは入社前の確認でしか見抜けない部分でもあります。
内定後こそ、求職者が企業を冷静に精査できるタイミング。この記事では、入社前に必ずチェックすべきポイントを整理します。
内定をもらった瞬間、立場が変わる
企業と求職者の立場は、対等であると言われますが、現実の就職活動では、企業が“選ぶ側”、求職者が“選ばれる側”という空気が強いです。
企業側は、圧迫面接と言われるような、ぶしつけな質問をしてくることもある。人手不足の課題を抱える企業の場合、欲しい人材には、雇用する前なのでメリットばかりアピールすることもあります。いずれにせよ、求職者は気を遣い、緊張しながら面接に臨みます。
しかし、この関係は 内定通知を受け取った瞬間に変わります。
企業はあなたを採りたいと判断した。ここからは 求職者が企業を審査する番です。
なぜ内定後の確認が重要なのか
多くのトラブルは、入社前に確認していないことで起きています。
- 求人票と実際の条件が違う
- 説明されていた仕事内容と現場が違う
- 固定残業代の存在に後から気づく
- 試用期間の待遇が「別条件」
- 残業・休日・有休の実態が曖昧
- 就業規則を見せてもらえない
これらは、入社前にチェックしておけば、防げた可能性が高い問題です。
内定後に必ず確認すべき書類
内定をもらったら、受諾する前に確認するべき書類があります。
内定通知書（企業側の意思表示）
まず必ず書面で受け取ること。ここに書かれた条件が、企業の“採用します”という正式な意思表示。
労働条件通知書（法律で交付義務）
労基法で必須。以下の項目は必ず照合しましょう。
- 雇用形態
- 基本給・手当・賞与
- 所定労働時間・休憩・休日
- 社会保険加入状況
- 固定残業代の有無と時間数
- 試用期間の待遇
- 残業時間の規定
- 就業場所・業務内容（※将来の異動範囲）
就業規則（最重要）
労働条件通知書の末尾に「詳細は就業規則による」と書かれがちだが、就業規則を見ない限り、実際の条件は分からない。
入社前でも、原則として閲覧を求めることができます。「見せられません」という対応は、注意すべきサインだと考えていいと思います。
労働条件通知書を渡さない企業には注意が必要
労働条件通知書と雇用契約書は、内容が重なるため「兼ねる」ことができます。そのため、企業の中には 郵送や事前交付を渋るケース もあります。
しかし、だからといって確認を省略していいわけではありません。事前に渡してもらえない場合は、内定者面談（オファー面談）で人事と一緒に細かく確認することが必須です。
もし、この面談での確認さえも拒否されるようなら、筆者としては 入社を控えるべきだと思います。
なぜなら、内定後はまだ「選ぶ側」でいられますが、雇用契約を締結した瞬間から、あなたはその企業の指揮命令下に入るからです。
入社前から隠す姿勢を見せる会社に、人生を預けられるでしょうか？
労働条件を確認させない企業に未来の透明性は期待できません。むしろ、そこで働くあなたの将来が暗くなる可能性が高いと考えます。
内定者面談の申し込み方（例文）
文面は簡潔でかまいません。企業の誠実さもここで分かります。下記をコピペするか、電話で口頭で伝えましょう。
内定者面談のお願い
「入社前にお互いの認識を揃えたいと思い、労働条件通知書・就業規則について確認できる面談の機会をいただきたく存じます。不安点を解消したうえで前向きに検討したいと考えています。」
誠実な企業ほど、丁寧に応じてくれます。ここで拒否された場合は、慎重に判断すべきサインです。
書類確認後に考えるべきポイント
書類確認後（内定者面談後）すぐ返事をする必要はありません。2〜7日程度時間をもらって考えるのが普通です。
- 不安点は解消したか
- 求人票とのズレはないか
- 職場の雰囲気に違和感は？
- 説明が曖昧な項目はなかったか
嫌な予感がしたら、その直感は大事に。
人生の大部分を使う場所です。「なんとなく入社」は一番危険。
入社したくないと思ったら…
内定承諾前なら、辞退は自由です。
「検討の結果、今回の内定は辞退させていただきます。」
相手企業は、あなたの人生の責任を取ってくれません。最終決断をするのはあなた。
求職者はもっと“選ぶ側”になっていい
多くの求職者は、「質問したら嫌われるのでは」「内定を取り消されたら困る」と考え、遠慮しがちです。
しかし、現実はむしろ逆。
- 誠実な会社ほど透明性が高く、質問に丁寧に答える。
- 危ない会社ほど入社前の確認を嫌がる。
ここで伝えたいのは、「いつでも対等」という話ではありません。内定前は、パワーバランスは企業側にある。面接で言いたいことだけを並べる求職者は、基本的に相手にされません。一方で、内定後は、主導権の一部が求職者側に戻ってくる。このタイミングでこそ、条件を確認すべきです。
実際、筆者も40代で人生初の正社員内定をもらった際、労働条件通知書の郵送を一度は断られました。さらに、提示された給与は求人票よりも3万円低い金額でした。そこでオファー面談を申し込み、労働条件通知書・雇用契約書・就業規則をその場で確認したうえで、最終的に入社を決めました。
求職者はもっと慎重でいい。もっと選ぶ側になっていい。あなたの人生を預ける場所だから、納得するまで確認していい。
本当の始まりは、入社した後だから。
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